元来は香道具一式を入れた蒔絵の箱に二個一組の聞香炉として納められていたもので、現在では一個ずつ分蔵され、火舎をとって象牙の蓋を付け、茶器として使用されている。
いかにも仁清の意匠らしく優美な菊の花が赤と紫で全面に撒かれ、葉を緑釉、軸を花色の釉薬で描いている。
土佐光起下絵による意匠構成と考えられるもので、江戸初期の宮廷の貴族趣味に合わせて焼造したものであろう。
この種の香炉を替茶器としたものは、松竹梅鶴の絵のあるものなどが知られる。
替茶器は本来、主茶器の茶の量を補うためのものであるが、気分をまったく変えて茶人の鑑賞眼を楽しませもしている。
【寸法】高さ:5.8 胴径:8.0
【所蔵】香雪美術館