高麗青磁は、十世紀頃から十三世紀末までの高麗時代を通じて朝鮮半島で焼かれ、前期のものは中国龍泉窯風の陰刻・陽刻文、中期以降は白色・黒色を象嵌した独特の象嵌青磁が多くなります。
古来わが国で高麗茶碗として貴ばれたものはほとんどが李朝前期のもので、高麗時代のものはわずかに雲鶴手と呼ばれる象嵌青磁があるのみです。
この茶碗は雲鶴手以前の伝世品で、宋磁風の凛然とした気品をもっています。
見込は片薄彫りで捻じ花が刻され、外側は無文で、高台は小さく引き締まります。
全体に見事な発色を呈し、特に花弁の間や小さな茶溜りは朋翠をみるような美しさです。
《寸法》高さ5.9 口径17.3 高台径4.7
《所蔵》藤田美術館