呉器茶碗の一種。徳川の治政下になって、朝鮮の使節が日本に来た折に、京都鷹ヶ峰の尼寺薬師院に女性たちが宿泊しましたが、彼女らが日常用器として使った飯茶碗と伝えられています。
あるいはそこまで細かく詮索せずに、尼寺も含む寺社で使われた木器の椀に似るところからの命名であったのかもしれないようです。
伝世のものをみますと、大徳寺呉器よりやさしいところがあるようで、この名にふさわしいです。この茶碗は、尼呉器の中では釉面に点々と出た雨漏り文様が珍しいです。内部の底近くは貫入が細かく集まって、これも見事な景であります。
《寸法》高さ8.3~8.5 口径12.7 高台径5.8《所蔵》藤田美術館