黒茶碗 銘三国一

黒茶碗 銘三国一
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鶴田 純久の章 お話
黒茶碗 銘三国一 053

高さ8.8cm 口径lO.Ocm 高台径5.8cm
 作行きは図51とほとんど変わらず、おそらく同人の作でしょう。
これも高台内中央に同様の印が捺されています。口部を僅かに内に抱え、胴も少し引き締め、胴裾は張っています。高台は大振りで畳付広く、高台内はまるく削り、畳付に目跡が三つ残って、総体にかかった柚は滑らかに溶けています。内箱の側面に「長二郎焼 利休所持 三国一黒茶碗 宗室(花押)」と仙叟が書付しており、また箱蓋の覆紙の裏に原叟の手紙が用いられていますが、その文中に「長次郎楽印 老年以後秀吉公より此印拝領のよし云々」とあり、また「在印だから特によろしい」とも述べています。そして、その箱書付によれば、楽字の印を捺した茶碗を利休が所持し、利休が所持していたことは天正十九年以前にこの種の印を捺したものを長次郎の窯で焼いていたことになり、長次郎焼を考察する上で貴重な資料といえます。この楽字の印は宗慶作の香炉にも捺されていますので、あるいは天正年間後期から文禄、慶長年間、常慶が別の印を用いるまで、長次郎、宗慶、宗味、常慶など「天下一茶わん屋」共用の印であったと考えるべきでしょう。そして、茶碗屋の茶碗は、すべて長次郎焼として世に出ていたため、宗旦、仙叟らの茶人たちも慣例に従って長次郎焼と称したのでしょう。

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