括盆・摺粉鉢。
略してすりばち。
形が富士山を逆さまにしたようで、内部に線条を刻したやきものの鉢であるようで、食物をすって粉末にするものであります。
古来伊部焼のものが特に有名。
『和漢三才図会』に「拙盆、俗にスリコバチといいます。
按ずるに、揺は物を研ますなり。
その響きは略ぼ雷の轟く声に似ます。
故に雷に従いますか。
その括盆の備前より出づるものは良し。
その他のものは土柔かくして筋理潰れ易し」といいます。
『物類称呼』によれば「江戸にてすりばち、大坂にてすりこばち、山陽及び四国にてかがつ、西国にてすりこのばちともいふ、東国の女言にてしらじといひ、上総及び出羽にていせばち、奥州にてらいばん、同じく三戸にてかはらけばちといふ」とあります。
日用必需の品であるので各地にこの製があります。
逞しく健やかなものが多いようです。
古備前・古信楽のものは「らいぼん」といい、水指や花入に使います。
なお摺鉢として用いた土器は須恵器にもある(「須恵器」の項参照)。