Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

名物。
楽焼茶碗、赤釉、ノンコウ作。
底近くに黒漆で「一介」の文字があり、ノンコウ作の中でも大佗びですぐれたものと評されています。
一介は千宗旦に出入りしていた左官で、ある時賃金の代わりにこの茶碗を一介と箱書して与えられました。
一介はこれが百余金で売れたので驚きその代金を宗旦のもとに持参しましたが、宗旦はいったん与えたものであるからと受け取るのを固く拒んです。
そこで一介はただちにこれを買い戻し、一生この一碗で茶事を楽しんだと伝えられます。
大変風雅な逸話なので一介の死後京都の三井八郎右衛門がこれを懇望しそれ以来同家にありましたが、文化(1804-18)頃松平不昧が購求しました。
代金は二百三十五両とも三百両ともいわれています。
(『茶事集覧』『大正名器鑑』)

前に戻る
Facebook
Twitter
Email