楽家四代。三代道入の子。1640年(寛永一七)生まれ。初名佐兵衛、のち吉左衛門。一入というのは1691年(元禄四)剃髪隠居後の法名。1696年(同九)没、五十七歳。前作にはまだ父ノンコウの影響がみられますが、のちには穏やかな作風となり、高台は丸味を帯び、また黒はやや青味を帯びて深味があり、これを特に一入黒と呼びます。黒にはまた美しい赤味の出たものがあり、一入の朱釉といわれて特色になっています。聚楽土は一入以後使っていないようです。総釉の無印が多いので土見在印が珍重されます。藤村庸軒のために数茶碗をつくり、それには用の字の釘彫りかおります。印は楽字の下のハが大きく開いています。