Yellow Seto flower vase of tabimakura(‘traveler’s pillow’)type Height 16.8cm
高さ16.8cm 口径9.4cm 底径91.4cm
桃山の美濃の茶陶には茶碗・水指・鉢・向付などは数多いが、花入は極めて少ません。そうしたなかにあって、この旅枕の掛花入は作振りの優れた茶味の深い名作として、美濃茶陶のなかでも特筆されるべきものであります。口部をまるく、胴を四方にした掛花入で、口縁はやや手づよく平らに、胴には轆轤目が緩やかにめぐり、平らな底に糸切の跡がくっきりと残っています。裾に、縦の箆目をつけて胴の作行きを引き締め、内外ともに釉が厚くかかっていますが、釉がかりに濃淡があり、ところどころに褐色の焦げが生じて味わい深い景をなしています。ことに底の釉膚の焦げの様相はひとしおのものがある。茶碗と花入の違いはあるが「朝比奈」と釉調、作振りにどこか共通したところがあり、あるいは同じ作人によるものかと推測されるが。両作とも黄瀬戸としては特異な存在であります。
内箱蓋表に「利休お好懸花生 黄瀬戸極上」と江戸前期、藤村庸軒時代の茶人山本退庵が書き付けていますが、信じてしかるべき、いかにも利休の詫び茶にふさわしい花入であります。「朝比奈」には千宗且の直書があることから推しても、どこか一連のものらしき感が深い。
外箱の蓋表には銀粉字形で「黄瀬戸 花入 花宴」と記されていますが、その筆者はわからません。大萱で焼かれたものでしょう。
黄瀬戸旅枕花入
その形を旅用の小形の枕に見立てて、茶人が旅枕と名付けたもので、は円筒形ですが、これはただ一品といってよい撫四方形の旅枕花入です。
また備前や信楽にはよく旅枕花入をみますが、黄瀬戸には珍しいです。
口造りは玉縁で、しっかりとした首をもち、胴には竪箆の痕や撫で痕を残して、全体に比較的透明な黄釉がかかり、ところどころ土をみせて美しいです。
その釉だちから、黄瀬戸がだんだんと志野に接近する過程を実証するような作品です。
背面に穴をあけ掛花入として用いられますが、寸法も申し分ありません。
【付属物】箱―桐白木、書付山本退庵筆
【寸法】 高さ:16.8 口径:9.2~9.5 底径:9.0~9.7 重さ:845