渋右衛門 しぶえもん

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鶴田 純久の章 お話

肥前有田南川原窯の陶家酒井田渋右衛門。
「酒井田柿右衛門家系譜」によれば、六代柿右衛門(1690、元禄三年出生、1735、享保二〇年没)の後見者であるようで、五代(1691、元禄四年没)の弟。
享保(年次の記録なし)9月晦日没(年令不明)とあります。
柿右衛門の作品中「元禄八乙亥柿」または「元禄十二年柿」の銘かおる作は、その年次からみて渋右衛門の製作と推定されています。
器(多くは皿)の特徴は柿右衛門手または伊万里焼のものに比べ形状においてその縁辺が必ず屈曲していること、屈曲していないものにおいてはその側面の曲線が奇抜であること、文様において色調が強烈で豪華を極め器形にすこぶるよく調和し、また文様は多く幾何学的に配置され形式化されていることなど。
またその文様は当時の染織物の文様から採られたものらしく、元禄・享保(1688-1736)の華麗な気分が実によく表現されています。
さらに渋右衛門の意匠・様式は、享保頃から始まった鍋島の作品と素地、色釉の取り扱い、染織物を取り大れた文様、呉須の色調などにおいて多くの相似点があるようで、器形もまた一面の共通性を発見することができます。
渋右衛門によって養成された工大が鍋島家に招かれ、ついにあのような精美な磁器を生んだのではなかろうかとも思えます。
(『陶磁』二ノ二)

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