仁清 色絵 藤花 茶壺

仁清 色絵 藤花 茶壺
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

国宝 昭和26年6月9日指定
Teajarwithwisteriadesign,enamelledware.ByNinsei.Edoperiod,Japan.
救世熱海美術館藏
高さ28㎝ 胴径2.7㎝
 仁清の色絵茶壺のなかでも、もっとも声価の高い優れた作品です。均斉のとれた真壺形の端正な姿であり、口部から腰のあたりまでかけられた白濁釉は温雅な釉調で細かな貫入が生じています。曲面にそって肩から胴にかけて満開の藤花が房を垂れ、葉と蔓がその間に巧みに配されています。微風に揺れ動く花房の様がそこには見られます。花の配色は赤を金で縁取ったり、銀や薄紫を赤で縁取ってあらわすなど配慮のゆきとどいた色彩効果にくわえて、小さな葉にいたるまで一枚一枚の葉脈針描きであらわすなど、心憎いばかりの入念な仕事が見られます。一部の銀彩が酸化してまわりににじみ出ていますが、やわらかな白濁釉の上で変わらぬ艶麗さをたたえています。胴裾にあらわれた土見せの素地は赤く焦げて、白い釉膚と鮮やかな対照を見せています。平らな底の左側に「仁清」の大印が捺されています。
四国丸亀藩主京極家伝来の茶壺のひとつでした。(西田)

色絵藤花図茶壺

色絵藤花図茶壺
色絵藤花図茶壺

Ninsei: tea jar with wistaria design, enamelled wareHeight 28.8cm MOA Museum of ArtRegistered as National Treasure
国宝
高さ28.8cm 口径10.1cm 底径10.5cm
MOA 美術館
 色絵京焼を完成させた御室焼仁清の残した数々の遺作のなかで、もっとも優れたものとしてあまりにも有名な作品です。
 わが国における葉茶壺の焼造は、室町時代中期以後多いに賞玩された唐物茶壺の倣作が備前や瀬戸窯で行われたのに始まり、その後信楽 伊賀、唐津などの窯でも焼かれていましたが、江戸時代に至って仁清が制作した茶壺は、従来のものとはまったく異なった装飾性豊かな色絵の艶麗優美な作行きで、茶壺に対するそれまでの概念を打ち破った新しい感覚のものでした。そして、それは江戸時代前期の京風文化を象徴する工芸作品であったともいえます。
 御室焼仁清の作風の大きな特色は轆轤技にあったといえますが、この茶壺ひとつを見ても、その手腕がいかに卓越したものであったかがわかります。胴裾から口部まで、大振りの壺としては稀に見る薄さで均等に挽き上げられ、その姿はまことに端正で気品が高い。口部から胴裾にかけて細かく貫入の生じた独特の白濁色の釉がかかり、釉膚はやわらかみをたたえて、磁器にはない陶器ならではの温かみを感じさせます。
 肩から胴にかけて、いまたけなわの藤の花房を幾房も垂らし、間に葉と蔓をあらわした構図の間の取り方も巧妙です。花の配色は銀で赤を縁取ったり、薄紫を赤、赤を金で縁取ったりして変化をつけ、薄緑であらわされた数多くの葉は、一枚一枚中央に針描きで葉脈をあらわすなど丹念な仕事をしています。しかし、後に一部の銀彩が酸化してまわりに滲みが生じるとは、仁清も考え及ばなかったのでしょうか。
 胴裾から底にかけては土見せで、平らな底の左側中央に、俗に大印と呼ばれている 「仁清」印を捺しています。かつて仁清の茶壺をいくつも蔵していた丸亀藩主京極家に伝来し、後に長尾美術館の蔵となり、第二次大戦後に世界救世教に移り、MOA美術館に蔵されています。

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