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鶴田 純久の章 お話

大名物。漢作茄子茶入。一名みをつくし茄子。
武野紹の所持した茄子茶入の一つで、底に「みをつくし」の文字と書判がある。飴色地に蛇蝎釉のなだれがあり、形状・釉色・景色ともに精美の極致に達し、小品であるが茄子茶入の逸物で、百貫茄子作物茄子・珠光小茄子と共に天下四茄子と称される。
もと松本珠報所持、鳥居引拙が百二十貫でこれを求め、紹鷗に六百貫で譲渡した。紹鷗が没する際、その子新五郎宗瓦が未だ六歳であったため、姉婿の今井宗久にこれを預けた。宗瓦が20歳の時所有のことで争い、1568年(永禄一一)宗久はこれを織田信長に献じ堺の東に五ヵ荘二千石を拝領した。当時の落首に「宗久は如何なる種を蒔きつらむ茄子一つが五ヶとこそなれ」とある。十年後に再び宗久はこれを賜わり、1583年(天正一一)豊臣秀吉に献じた。その後宗久の子宗薫、徳川幕府(1627 寛永四年)、東本願寺、粟津左近、河村瑞軒、瓦屋兵衛、坂本周斎を経て鴻池家に入った。(『山上宗二記』『山上宗二茶談』『名物記』『麟鳳亀龍』『大正名器鑑』)

じょうおうなす 紹鷗茄子

漢作唐物茄子茶入。
大名物。
別名「みをつくし茄子」。
武野紹鴎が所持していたので「紹鷗茄子」として世間に知られていますが、茶入の底に「みをつくし」の文字と書判がありますので、「みをつくし(澪標)茄子」の別名があります。
しかし、なぜこのように名付けたかは定かでありません。
茶道の主流を歩んできた茶入で、紹鷗遺愛品であり鴻池家伝来として名高いです。
仕覆二枚のうち一枚は正法寺緞子で、ことに五種緞子の一つとして珍 重さ:れている。
形はやや小振りですが、総体に飴色地に肩先より蛇蝎釉がなだれかかり、鮮やかな変化をみせています。
置形に流れ集まる三筋の釉色もよく、露の止まりも青釉厚く溜ります。
腰筋の低い側にある釉抜けの丸い添景も、賞美されじゃかつるにふさわしいです。
形状・釉色・景色ともにすぐれ、小品であるが茄子茶入中の逸品といえます。
【付属物】蓋―二、紹鷗好、木口挽・古織好仕覆二、紹鷗間道・正法寺緞子(図版右より) 仕覆箱 桐白木、書付閑事庵宗信(坂本周斎)筆、蓋裏書付同筆家木地黒塗、胴合口藤組、内朱塗四方盆利休在判 盆箱 桐白木、蓋裏書付悴啄斎宗左筆内箱 桐白木、書付小堀遠州筆 外箱桐白木、書付閑事庵宗信筆、蓋裏書付同筆添状―小堀遠州より江月和尚あて
【伝来】松本珠報―鳥居引拙武野紹鷗—今井宗久—織田信長―今井宗久 豊臣秀吉 今井宗久―今井宗薫—今井宗吞徳川家光 東本願寺 河村瑞軒閑事庵宗信 鴻池善右衛門
【寸法】 高さ:60 口径:2.7 胴径:6.3 底径:2.7 重さ:55

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