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鶴田 純久の章 お話

名物。真中古茶入、橋姫手。
布引の滝のような釉のなだれかおるために名付けられました。
小堀遠州所持、赤星家を経て東京藤原銀次郎家に人りました。

きぬのびき 布引

瀬戸真中古窯茶入、橋姫手。
「布引」の名は茶入の釉景に滝のごときなだれがあることから命銘されました。
伝来は小堀遠州から代々同家に伝わり、七代宗友のとき同家を離れ、土屋能登守・松平伊賀守・水野出羽守・和田内記と転伝しました。
その後赤星家の蔵となりましたが、大正六年六月同家入札に出されて、藤原銀次郎に落札されました。
姿はずんぐりとした感じで口広く、甑は低く捻り返しはありません。
肩は円やかに撫で、裾でやや張っています。
一面に褐釉に渋柿釉がかかり、他面に黄・青釉が肩より裾までなだれて銘の由来をなしています。
裾より底に露われた土は白鼠色土で本糸切がみられます。
またこれに交錯して二本の筋が走っています。
また釉際の溜りがいくつか露をつくっていることも見所となっています。
家は花櫚で「布引」と額彫りされていますが、筆者は不明です。
外箱は宗中で、さらに蓋裏に次のように書き付けています。
「此布引之茶入者宗甫所持之器也。
他家之所望応ジ、而テ既ニ星霜ヲ経テ久シ。
今幸二披覧ヲ遂グ。
因テ永世其ノ不朽ヲ得者世之愛翫之厚キト為ス所ヲ覚ユ。
依而来由記シ云々。
丁酉年宗中」。
さらに本屋了我も文を添えてその由来を記しています。
【付属物】 蓋仕覆―二、濡子地金襴・清水裂(図版右より) 挽家花櫚家仕覆―甲比丹内箱書付小堀遠州筆 外箱書付小堀宗中筆 添文本屋了我筆
【伝来】 小堀遠州小堀宗友土屋能登守 松平伊賀守 水野出羽守 和田内記―赤星家―藤原銀次郎
【寸法】 高さ:6.4 胴径:6.5

布引 きぬのびき

中興名物。破風窯茶入、米市手。総体に掛かった黒金気釉の中に口縁から肩にかけて岩間より流れ落ちる布引の滝のような一条の黄釉なだれがある。もと半井養所持、土屋相模守、上田藩主松平伊賀守、河村迂叟を経て松浦心月庵に入り、以来松浦家に所蔵された。(『名物記』『土屋蔵帳』『古今名物類聚』『大正名器鑑』)

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