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鶴田 純久の章 お話

大名物。唐物文琳茶入。
釉および形状が酸漿に似ているとしての銘であります。
総体に黒飴釉の中に柿色を交え、特に肩先においてその通りであります。
また黒飴釉中に金気を帯びた柿色竪箆目がこまかく総体にわたります。
釉色は光沢麗しく、手取りは極めて軽く、白土がねっとりとして気品高尚な茶入であります。
1616年(元和二年)4月5日に酒井雅楽頭忠世が駿府で徳川家康に謁見した時これを拝領し、以来姫路酒井家の第一の家宝でありました。
(『大正名器鑑』)

ほおずきぶんりん 酸漿文琳

唐物文琳茶入。
大名物。
「酸漿」の名はその形状と釉色によるものです。
『徳川御実記』より一部記載しますと、「此茶入は口細くして文琳の如く、形は肩衝に似たれば、茶書に或は文琳といひ、或は肩衝といへり。
今草間和楽編の茶器名物図彙を見るに、其中に載せたる相阿彌東山殿筋之記に、永正十三年十月十日の日附を記し、文琳肩衝といふ名の下に茶入圖を掲げたりますが、是れ即ち後世ほうづき文琳と称するものなるべし。
元和二年四月五日、酒井雅楽頭忠世も御病床にて酸漿の茶入を賜」。
すでに東山時代の同朋衆が、こうした茶入の面白さを見出していたことは注目すべきことです。
口造りは小さく甑は高いです。
肩はややひろがり、胴より小すぼみの姿としきまだらは、いかにも酸漿を想わせ、文琳肩衝といわれるのもこの姿にあります。
釉色も黒飴地に柿色釉が縦に斑をなし、腰以下は土もまた細い縦縞を呈しています。
土は赤みを帯びた白土で、きめ細やかであり、底の糸切も鮮明です。
仕覆は三枚添っていますが、緞子・間道・金襴とすべて異種を揃えて整っている。
『相阿彌東山殿之記』 『茶器名物図彙』などに記載。
【付属物】蓋―二 仕覆―三、笹蔓緞子・船越間道・永観堂金襴(図版右より)仕覆箱 桐白木書付 挽家 黒塗 若狭盆 盆箱 桐白木書付 総箱一部蓋錠前付、蓋裏書付酒井雅楽頭侍従源朝臣忠実筆
【伝来】 徳川家康酒井雅楽頭忠世
【寸法】 高さ:8.8 口径:2.9 胴径:76 底径:3.3 重さ:66

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