高麗茶碗のうちに三島茶碗というのがあり、こうした檜垣文様を象嵌した作品があります。この志野茶碗は明らかにそうした三島を写したもので、他に類品のない珍しい茶碗です。本歌の三島茶碗は器体を薄くつくり、そこに白釉の細い線で文様を浮き出していますが、ここでは厚い器体に無造作に文様が彫り込まれ、その素朴な線が、器形のずんぐりした頑固なところとよく似合っています。高台は素人の手づくねのように稚拙で、そこがまた面白いです。三島はのちに御本三島となって再び登場してきますが、本歌の三島写しはもっとスマートである。《寸法》高さ7.9~8.3 口径14.2~14.6 高台径6.4 同高さ0.7 重さ635