口造りは小さい姥口で、肩を落とし、胴を長く裾ひろがりとし、その先を羽とした山形の釜で、胴の下方に姫松を繊細な線で現わしている。
鐶付は鬼面で、蓋は花の実摘みの落込み蓋を載せている。
この形の釜は富士山に見立てて「富士釜」と呼ばれている。
地文も松ばかりでなく桜や牡丹などあり、また変形も少なくない。
『名物釜記』 に姥口、摘み鐶付の芦屋作の「富士釜」が記載されている。
また桜川地文の「富士釜」は西村道仁作であり、仙叟好みに「四方富士釜」、如心斎好みに鐶付は鬼面、口に擂座をめぐらした「擂座富士釜」がある。
【付属物】極書―大西浄久筆
【寸法】 高さ:22.5 口径:10.7 胴径:28.1