明代。
名物裂。
京都東山清水寺の戸帳裂として、元禄四年(1691)まで使用されていたのでこの呼称がある。
同種同紋の裂が多く、いずれが本歌か判明しないが、紺の糯子地に梅花小禽紋が五色の色糸で織り出され、金銀糸が加えられている。
『古錦綺譜』に「清水寺本尊外張切ナリト云」、また「地色濃アイミル茶、紋梅ノ立木二鶯也、ヨリ金入ル、地色茶色モ有リ」とある。
『和漢錦繡一覧』にも同じ記載があり、金襴の部に入っている。
また紋様は下絵をもって中国で織らせたと伝えるが定かでない。
前田家伝来の裂には金糸はみられず鳥は尾長鳥で、東京国立博物館のものには鳥紋はなく、少なくともこの裂が最も記録に近いと思われる。