元代。
名物裂。
丹地は赤地の一種で、年代の経過により退色して淡い橙色または朱色に変化しているが、もとは鮮やかな赤色を示していたのであろう。
紗の地に作土紋を互の目に配し、その中に三種の花紋を内包している。
丹地の印金は特に珍 重さ:れるが、紋様もまた珍しい図柄を示し、明代にはみられない紋様形式のもので、おそらく元代までさかのぼり得る貴重遺品といえる。
この断片はかなり大きく、印金のもつ重厚な趣よりもむしろ洗練された精緻さがうかがえる。
なお、このほかに丹地の二重蔓の印金もあるが、これは明代初期の様式を示すもので、元代作品の遺存はまことに稀有といわねばならない。
【所蔵】北村美術館