明代。名物裂。東山裂は東山殿足利義政が明に依頼して織らせたと伝える裂であるが、確証はない。むしろわが国向けの輸出品として織られた裂地であろう。注文品というよりは、東山御物の表具裂に使用されているのでこの称があるとみられる。また義政伝来の大名物「上杉瓢箪茶入」の仕覆この裂が用いられているのも見逃せない。一重蔓唐草紋には白地・縹地・紺地・茶地などがあり、宝尽紋のあるものとないものと両種があり、明代永楽宣徳頃の渡来品に比べてはるかに端正で、もの静かな趣が感じられる。宝尽紋の組み合わせは玉潤筆の瀟湘八景図にみる東山裂とは多少異同があり、蔓唐草紋の流動性にも渋滞がみられ、織技に稚拙さがある。