明末清初。
名物裂。
名称は、堺の町人で利休の女婿である万代屋宗安(―1594)の所持によるものと思われる。
万代屋緞子と称するものには数種類が認められる。
同系の紋様のものに織部緞子や三雲屋緞子などがあるが、製作年代は明末清初頃の織製になると思われ、宗安在世中のものかどうかはわからない。
萌黄地に唐草紋の裂が一般に知られ、他に茶地に雲龍の丸紋散らしの緞子がある。
この裂は薄萌黄に金茶の色糸で青海波と波頭を現わし、波間に漂う梅鉢紋を配したもので、「谷風にとくる氷のひまごとに打ちいづる波や春の花」(『古今集』春歌上)を想わせ、春風駘蕩のを伝える好ましい名物裂である。
【所蔵】東京国立博物館