伝馬遠筆。
重文。
馬遠の山水は、広い景観を写さず、本図のような自然の一辺一角を画くところから「馬一角」と称されている。
筆致構成は整い、放射状に垂下する老松のもとに月を見上げる高士の姿は、静寂なうちに詩情を伝えている。
金泥によってくまどられた月の描写は、皓々たる月光をあまねく天空に満ちあふれさせ、一片の松葉が音もなく落下し、大自然の律動の一瞬を捉えている。
馬遠は李唐を師とし、南宋画院の第一人者としての評価を得ているが、後世の評者のいう馬派の様式を確立したのは、こ馬遠であった。
【伝来】 黒田家
【寸法】全体縦143.5 横39.0 画面 縦57.0 横26.3
【所蔵】救世熱海美術館