炉縁は元来、真塗または木地のものが用いられたが、江戸時代初期には種々の蒔絵が施され、豪華な高台寺蒔絵や漆絵による装飾も行なわれ、江戸も中期を過ぎると、金貝や高蒔絵・埋物まで用いた華美な意匠のものが現われるようになった。
この炉縁の蒔絵は秋草を所狭しと描き、四寸(12.1センチ)ほどの間隔で向かい合ったり追いすがる姿のあでやかな蝶平蒔絵と絵梨地で現わしている。
江戸中期の華麗な蒔絵装飾のすぐれた作例である。
菊・萩・薄・笹・桔梗・藤袴・女郎花が描かれ、秋の七草の葛撫子に代わり、菊・笹が加えられている。
【寸法】一辺43.6 高さ:67
【所蔵】畠山記念館