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小堀遠州 尺八 銘 深山木

小堀遠州 尺八 銘 深山木
小堀遠州 尺八 銘 深山木

付属物 箱 桐白木 書付 小堀遠州筆
同蓋裏 書付 江月和尚筆(漢詩)
添状 益田鈍翁筆
寸法
高さ:27.4cm 口径:10.8cm 胴径:10.7~11.4cm 底径:9.8~10.7cm 重さ:625g
所載 遠州蔵帳 古今名物類聚

 茶道具中いちばん買いにくいものは茶杓と相場がきまっていた。あの小さな竹箆が一本何十万円とか何百万円とかするのは、しろうとにはわからぬ価である。ところが、さらに買いにくいのは竹花入、しかも遠州流の竹花入である。あの竹の切れ端で、しかも作者の証明もなく(千家では幸い花入自体に作者名が必ず書き込まれてある)、ただ箱が添うて、その箱に自署があるだけで、辛うじて納得のいくいどであり、箱と花入とはまるで別個の存在のように見えよう。
 この「深山木」などは、尺八だけに花窓もなく、署名もなく、ただ竹の棒切れにすぎない。よほど買い度胸の人物でないと、買えるしろものでない。おもしろいのは棒切れであるのが真物で、署名のあるほうがかえって贋物だと、目利き連中は斥けるからいっそうおもしろい。
 この花入は「遠州蔵帳」に花入として「古今名物類聚」に名物としてとり上げてあり、これ一本で古来遠州の代表作とされている。
 遠州は利休とちがって選竹の吟味厳しく、竹の美しさを発見するのに鋭い感覚をもっていたことは茶杓についても同様である。「深山木」の銘は次の和歌から来ている。
深山木のその梢とも見えざりし
さくらは花にあらはれにけり
また江月和尚は箱裏に次の漢詩を書いている。
森々樹木深山裏 別有宗門好思量
伝道世尊拈出処 一枝花発伴鵞皷
 この花入は明治十九年遠州の末孫宗中が、小堀家伝来の蔵帳品二簞笥五長持に納めた百八十二点を売却したとき、渡辺驥氏が買って所蔵していた。その後日清戦争が終って明治二十九年、経済界が好景気のおり、渡辺氏がこの「深山木」を売却したときは五百円であった。それを買った益田鈍翁としても相当の奮発だったため道具界の評判となった。終戦後、益田家を出て関西の某家に移ったときはすばらしい値であった。

箱 桐白木 書付 小堀遠州筆
深山木 宗甫造

箱蓋裏 書付 江月和尚筆(漢詩)
更々樹木深山裏月霜皆到
好惣提携長世尊称如是
一枝花香伴独清

添状 益田鈍翁筆
深山木花入の箱も書も
江月和尚の書付も
真に立派なるもの也
深山木と申す銘により
西行の哥を思ひ出かたり
深山木のその梢ともみえさりし
さくらは花にあらはれにけり
此哥なるへしと存候 此哥によりて
茶のゆの心もうかひ出候(後略)
鈍翁(花押)

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