明代。
名物裂。
蜀細は明代末期の紋織物で、細かい横の崩し綾または山形状の地紋をもち、多彩な色糸による柔軟な織物である。
蜀細は経糸を生糸(練らない糸)と種々のどう糸で矢筈にからみつつ、山形状の組織で紋様を現わした裂で、特に明代万暦年間(1573~1619)のものが有名である。
この裂は縹地に牡丹唐草紋と獅子紋を交互に並べ、牡丹花の芯部に鳳凰を納め分銅を間に配している。
織留部分は紺と黄土の横縞の間に雲板紋を縹地に、「富貴長命」の文字を朱(または紅か)地に、花兎紋を薄茶地にそれぞれ織り出している。
蜀細は厚手の錦風の織物でありながら、肌触りが柔らかく、折り皺が残らないなどの長所がある。