牧谿筆。重文。瀟湘八景図の内。雁は晩秋初冬、北方より飛来し早春再び北方に去る。空を渡るときは群行し、果てしない憧憬を感じさせる。昔日蘇武が多年匈奴に捕えられ、望郷の想いを雁に託した故事は、一層の感慨この落の姿に与えた。瀟湘八景に登場する自然は、単に洞庭湖周辺に限定されたものではなく、四季朝暮に変貌する自然の様相を、八景の中に要約し、提示したものと解される。牧谿は、雨や風、朝や夕方の大気の中千変万化する自然の外貌、月光に映し出された水面の微妙な表情に心を留め、その情趣を画中に再現せしめたのである。【寸法】全体縦139.0 横112.0 画面縦33.3 横110.0