李朝。
名物裂。
李朝中期頃盛んに縫製された、多彩な色糸と金糸で縫い取りにより紗地に紋様を施した裂である。
縫紗であるが、中国風の豪華で図柄の整然とした典雅なものではなく、牡丹の花紋や葉も大ざっぱで、蔓太細があったりして、いかにも多彩でこってりとしながら、どことなくのんびりとした肩のこらない趣が楽しい。
墨蹟の中廻しに用いられる例が多く、禅僧の豪放で素朴な書風に似合う雰囲気をもっているといえる。
上代紗の格調の高さはないが、野性味が感じられ、古筆などの繊細な感覚の表具には向かない。
朝鮮紗の特徴は多彩な色糸による織り込み、または縫い取りが施されていることで、縫紗の中でも特殊な雰囲気をもっている。