惟肖得巌序。
重文。
永享五年(1433~3)、柳江侍者のためにその書斎聴松軒に題した惟肖得巌の序文をもつ典型的な書斎軸である。
その後長禄二年じくうんとうれん(1458)竺雲等連らが追賛している。
主山を中心に大きく配し、景物も画中全体に描出されている点は、初期の書斎軸に共通するものである。
淡彩の明澄性は、枯淡蒼古の画趣をもつ周文画風と異なり、むしろ明兆一の画風を示している。
室町最盛期の山水画の筆者は、後世一様に周文画として扱われている場合が多く、本図の場合も同様である。
俗界を離れた溪山の一角に、松声を聴きつつ書斎生活を送る禅僧の理想郷を詩画した秀作である。
【寸法】画面縦99.9 横3.8
【所蔵】静嘉堂