円山応挙筆。
寒風の吹きすさぶ冬の海辺を、乱れ飛ぶ千鳥の一群を画いた作品である。
波に千鳥は、古来日本人の詩情を培ってきた古典的主題である。
細墨線による描写は、微妙な自然の情感を表出し、水の部分は薄い藍、六羽の千鳥の脚には朱を点しているだけの色彩構成が、かえって効果的に画中の情趣を支えている。
「安永丙申暮秋写応挙」といういかにも応挙らしい謹厳な落款がある。
安永丙申は安永五年(1776)応挙44歳に相当する。
応挙(1732~195)は円山四条派の創始者である。
石田幽汀に画技を学び、そのすぐれた写実力は江戸画壇随一である。
【寸法】画面38.4 横60.0