尾形乾山筆。
画面上部は左側に、下方は右側から紅白の花を付けた萩が風に揺らいでいる。
そして中央に大きくあけられた余白に「たちのこす錦いくむら秋萩の花におくある宮城野の原」と乾山自筆の和歌が一首、乾山流の書体で書かれている。
いずれは本歌のあるものと思われるが、錦を断つことと紅白の萩が立ち残る姿とを相対的色彩によって対比させ、秋の情感を表現することに成功している。
兄光琳とともに江戸も元禄文化を代表す近代感覚の意匠化が、古典文学の土台の上に築かれているさまを、まのあたりにする詩情豊かな作品である。
落款は「京城紫翠深省画」、印は「霊海」。
【寸法】画面縦130.0 横52.5
【所蔵】畠山記念館