伝馬遠筆。
国宝。
濃墨を効果的に駆使した前景、風雨にざわめく中景の樹葉、複雑に組み合わされた遠山など、南宋寧宗(1194~1224)時代の院体山水画の構成を示している。
生い茂る樹葉の一枚一枚が、自然の表情を伝え、鍛え抜かれた画法によって見事に表現されている。
馬遠画の自然描写と構築的な山水表現は、足利将軍家の要望によって室町水墨画壇に受容され、周文流山水画として確立する。
馬遠画は日本水墨画に骨格を与え、夏珪画は表情を与えたのである。
本図は無款無印であるが、筆者を馬遠以外には擬し得ない優品である。
【寸法】 全体 縦199.0 横71.4 画面 縦111.3 横55.9
【所蔵】静嘉堂